2003年、皆既日食を生中継するというプロジェクトで南極に行った。「南極では南極に関する本を読みたい!」とスーツケースに入れたのが、ローランド・ハントフォード(Roland Huntford)著『The Last Place on Earth: Scott and Amundsen's Race to the South Pole』(地上最後の土地 スコットとアムンゼンの南極点到達レース)。
イギリスのスコット隊とノルウェーのアムンゼン隊の競争を同時進行形で比較分析する、600ページ近い大著である。著者のハントフォードはシャクルトンやナンセンの伝記も書いている南極通。しっかりしたリサーチもさることながら、文章がめちゃうまいため、優れたサスペンス小説のように読ませる。なにしろ南極にはこの本一冊しか持っていかなかったので、ブリザードでテントに閉じ込められ他にすることがなくても、「早く先に進みたい!」とハヤル心を抑えながら、毎日少しずつ読んだ。
大変な思いをして南極点に到着したスコット隊5人の目に映ったのはノルウェーの国旗。アムンゼン隊は5週間も前に、南極点に到達していたのだ。飢えと疲労と寒さから、南極で壮絶な死を遂げたスコットは、即座に国民的英雄となる。
しかし、ハントフォードによると、計画段階で勝負は既についていたという。現地の事情をあまり考慮にいれず、騎士道的な精神論で熱く突っ走ったスコットと違い、アムンゼンは事前の準備を怠らず、緻密な計画を立て、適切な装備と服装を整え、犬の扱い方を理解し、スキーを効果的に使った。そのお蔭で、スコット隊の苦労とは対照的に、アムンゼン隊の旅はスムーズに進んだ。アムンゼンは南極点到達物語を本に書いているが、あまりに淡々として、読み物としては全然面白くないらしい。(自身も冒険家で南極体験があるラナルフ・ファインズなどはハントフォードのスコット分析を批判し、スコットを擁護している。)
