2015年10月11日日曜日

コウモリとナマケモノ 逆さになってもなぜ頭がクラクラしないのか

逆さま状態が続くと、頭に血が上ってクラクラする、というのは常識。ウィキペディアには「逆さ吊りの状態が長時間に渡るものであった場合、血圧の急上昇による血管の破裂、又は胃袋から逆流した吐寫物が気道を抑えた事による窒息死などが発生する確率が高い」とある。クラクラどころではない。死につながる怖い活動なのだ。

しかし、逆さまになって平気そうな動物もいる。すぐに頭に浮かぶのがコウモリナマケモノ。大丈夫なのだろうか。

ナショナル・ジオグラフィック』(National Geographic)でその答えを見つけた。

まず、なぜ逆さになると頭がクラクラするのか。

人間の大人の体には、平均して約7.5リットルの血が流れている。逆立ちなどすると、それだけの量の液体が一度に頭方向に流れてくるので、気持ちが悪くなるという。

(National Geographic)
一方、コウモリは軽い。世界最小のコウモリ「キティブタバナコウモリ」(Kitti's hog-nosed bat)は体重僅か2グラム。世界最大級だって1キロちょっとしかない。ミシガン州のコウモリ保護団体「Organization for Bat Conservation」によると、体重があまりにも軽いので、重力が血流に影響しないのだという。

コウモリはまた、逆さになっても疲れない体の構造を持っている。足の腱が特別な作りになっているため、頭が真下の状態で、身体が完全にリラックスしているというのだ。逆に、頭を上にして座ってしまうと、飛ぶために筋肉を収縮する必要があり、余分なエネルギーがかかってしまう。この腱は超優秀。逆さ状態で死んでしまっても、落っこちないでつかまっていることができる。だから、コウモリにとって、逆さま人生の方が楽なのだ。

では、ナマケモノは? 体長41‐74センチというと、ネコくらいの大きさか。さすがに逆さ状態では、頭に血が上るのでは?

ワシントンDCのスミソニアン博物館内国立動物園National Zoological Park)のドン・ムーア(Don Moore)によると、実は、ナマケモノは一般に思われているほど、逆さになっている時間が長くないそうだ。そして、移動のため逆さになる場合でも、あまりにも動作がゆっくりなので中耳が常に安定しており、頭がクラクラしないとのこと。

また、指が2本の「フタユビナマケモノ科」(Megalonychidae)は、動くときいつも鼻を下に向けている。指が3本の「ミユビナマケモノ科」(Bradypodidae)はもっとすごい。地面に平行に移動する時、首を180度回転させるのだ。つまり、木の枝にぶらさがっているのに、頭のてっぺんが下に向いていない。(ウィキペディアによると、「首を270度回転させることができるため、体を動かさずに周りの葉を食べることができる。」)いずれにせよ、頭に血が上ることはない。

ナマケモノはあまりにゆっくり動くせいか、毛皮に藻類が生えている。ナマケモノの毛皮の中で生きるのは藻類だけではない。2014年、ナマケモノの毛皮にしか住まない蛾が発見された。ナマケモノは1週間に一度だけ地上に降りて用を足す。その際、メスの蛾が毛皮から出てきて、フンの中に卵を産む。孵った蛾はナマケモノの毛皮まで飛んで来て交尾する。自然ってすごい。

(National Geographic)

ところで、トイレ中のナマケモノは表情がめちゃ可愛い。たとえば、この動画はナマケモノ孤児院でのトイレ訓練風景。あまりにも幸せそうで、心が癒されること請け合い!



(参考資料:National Geographic "Bats and Sloths Don't Get Dizzy Hanging Upside Down-Here's Why")

【関連ウェブサイト】
National Geographic
Organisation for Bat Conservation
Smithsonian National Zoological Park

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