2015年4月27日月曜日

日本だけではなかった「なりすまし詐欺」 「ニューヨークタイムズ」紙のエッセイ

息子や娘を装った電話をかけ、虚偽の急用を訴えて現金を預金口座等に振り込ませる「なりすまし詐欺」。かつては「オレオレ詐欺」と呼ばれていたが、手口が多様化し、名称と実態がそぐわなくなったことから、2004年12月、警察庁が統一名称として「振り込め詐欺」を採用した。

更に2013年、また名称と実態がそぐわなくなったことから、警視庁が新たな名称案を募集。応募案のうち最多だっだのは「なりすまし詐欺」。「母さん助けて詐欺」が最優秀、「ニセ電話詐欺」と「親心利用詐欺」が優秀作品に選ばれた。また、広島県警は「なりすまし詐欺」、福岡県警と茨城県警は「ニセ電話詐欺」、鹿児島県警は「うそ電話詐欺」と呼んでいるとか。(ウィキペディア

誰でも知っている詐欺なのに、未だに騙される人が多いのはよほど手口が巧妙になっているのであろう。1人の人間が被った被害の最高額は4億数千万円。被害者は岩手県の70代の男性だった。なりすまし詐欺の被害者の多くは高齢者世帯だという。

先日、「ニューヨークタイムズ」(The New York Times)紙に「Grandparent Scam」というエッセイが掲載されていた。・・・「祖父(母)詐欺」?

アメリカでは孫になりすますことが多いらしい。

数年前、筆者クリスティーン・スニード(Christine Sneed)の祖父宅に、クリスティーンを名乗る若い女性から電話があった。スペインを旅行中、厄介ごとに巻き込まれたので助けて欲しいという。麻薬、パスポート紛失、警察・・・。「両親には黙っておいて」と懇願し、泣き出した「孫娘」に言われるがまま、祖父は3回にわたり計6000ドルをスペインに送金した。

10日くらい経って、クリスティーンは祖父から電話を受ける。「いつスペインから戻って来たんだ」と驚いた様子。「スペインには行っていないわよ」というクリスティーンに、祖父は若い女性からの電話の一件を語った。声がクリスティーンにとても似ていた上、クリスティーンの家族や職業についても良く知っていた。しかも、担当警察官の電話番号まで教えてくれた。その番号に電話したところ、その女性が言っていることは本当だと「警察官」が保証してくれた・・・。

インターネットが普及したおかげで、個人情報を得ることが以前より格段に楽になった。しかも、クリスティーンは文章を書くのが商売。グーグルすれば、親の犬の名前までわかるという。

詐欺の被害に遭ったことで、86歳だった一人暮らし祖父が心配したのは、自立した生活を失うことだった。「自分で自分の面倒を見ることができない」と老人ホームに入れられてしまうことを恐れたのだ。

祖父の自立が奪われることはなかったが、クリスティーンとの関係は完全に壊れてしまった。クリスティーンが電話をすると即座に切ってしまう。ある日など3回も電話した。本当に孫娘が電話しているのだと信じてもらおうとしたが、2回は電話に出てから切られた。3回目は留守電。

節約・貯蓄してきた祖父にとって、6000ドルの損失はたいした被害ではなかったらしい。しかし、傷ついたプライドは元に戻らない。それとも、見ず知らずの他人を孫娘と信じてしまった自分に、どうしようもない老いを感じてしまったのか。孫ですら信じられなくなったのかもしれない。

再び騙されることが怖くて電話に出ることが出来ず、孫娘が留守電メッセージを残すのを、受話器の前に座って聞く老人の姿は悲しい。

振り込め詐欺は検挙率が極めて低いことから、騙す方にとっておいしい仕事だ。日本やアメリカだけではない。中国や韓国でも盛んらしい。被害者もさまざま。ブルネイ国王は約2億円騙し取られたとのこと。

警視庁では、家族が話し合って「合言葉」を決めておくなど、色々な対策を勧めている。クリスティーンの一家にも教えてあげたいな。
警視庁振り込め詐欺被害防止ポスター

【関連ウェブサイト】
"Grandparent Scam" New York Times
警視庁「振り込め詐欺」

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