嬉々として報告する私に、英系南ア白人の親友が唖然、憤然、憮然。
「あなたがそんなことをするとは思ってもみなかったわ!」
???
何故そんなにショックを受けるのか、皆目わからない。
「ハッシュ」(hash)とは「ハッシュ・ハウス・ハリヤーズ」(Hash House Harriers)という世界的なランニング愛好団体が行うイベント。大英帝国がマレー半島に設立した「イギリス領マラヤ」(Federated Malay States)のセランゴール(Selangor)州で1938年に始まった。
イギリス人役人その他の現地に滞在する外国人が、週末の飲み過ぎによる二日酔いを吹き飛ばそうと、月曜日の夕方走り始めたのだ。月曜の朝は二日酔いがひどすぎて、運動どころではなかったのだろう。「毎週月曜日に開催」ということは、「毎週末酔いしれた」ということか。
ルールはイギリスの伝統的な子供の遊び「ウサギ狩りごっこ」(hare and hounds)が元になっている。「野ウサギ」(hare)になった子供たちがウサギの匂いを象徴する「紙片」をまき散らしながら逃げ、他の大勢が「猟犬」(hound)になって、追いかけるクロスカントリーゲームだ。野ウサギがゴールに到達する前に捕まえなければならない。
バリ島で優雅な引退生活を送る、琉球古武術保存振興会ベルギー支部長のロイ夫妻が、「観光客が目にすることのないバリ島を見せてあげよう」と、5月19日のハッシュに連れて行ってくれた。
バリ島のハッシュは毎週月曜と木曜の午後。場所は毎回異なる。その日の「野ウサギ」係が前もって白い紙片を道筋のところどころに置いておく。道を間違えて、後戻りすることもあるとか。
コースは、5キロ程度の「ショートコース」(short course)と10キロ程度の「ロングコース」(long course)の2種類。犬の散歩を兼ねる60歳代のロイ夫妻は短いコースを歩くだけだが、鍛え抜いた体を誇るかのようにひたすら走るツワモノも沢山いる。(ハッシュの「野ウサギ」はイベントの運営を行うのが仕事なので、「ウサギ狩りごっこ」と違い、捕まらないよう逃げまくる必要はない。)
「今日はどんなコースかなあ」とロイ。集合場所だけ決まっている。出発地点とゴールは同じ。コースはスタートしないとわからない。町中(まちなか)、ジャングル、山、田んぼ、畑、川・・・。道なき道を辿ることもしばしば。雨の後だと道が滑り易くなる。増水した川を泳いで渡ることもあるという。
楽しみだな~。
「バリ島で暮らす欧米人の娯楽だろう」との勝手な想像は、集合場所であっさり打ち砕かれた。60-70人の参加者のうち、7割くらいがバリ人。地元の人がこんなに参加しているなんて、なんだか嬉しくなる。しかし、月曜の午後3時頃からイベントに参加できるとは、みんな、どんな仕事に就いているのだろう。
事前予約の必要なし。今日の担当者が集合場所で受付をする。参加費として10万ルピー(約1000円)を払った。参加費には水やビールが含まれる。そして、各人が思い思いに出発。
集合場所の村を通り・・・
お揃いの赤が目印のロイ夫妻 |
この日は3回川渡り。一番深いところで、膝上だった。 |
山の中あり・・・
午後4時でもまだ日差しが強いので、日陰がうれしい。 |
田んぼあり・・・
猫より小さい犬のボー。元はランボーだったが、名前負けするのでボーに改名。 |
川沿いの道あり・・・
ジャングルあり・・・
狭い山道を歩いていたら、後ろから「パッシング!」(passing)という声。「追い越すのでどいてくれ」という合図だ。
自然以外の出会いもある。例えば、子供たち・・・
ニワトリ・・・
ガチョウ・・・
ブタ・・・(この待遇からすると、あまり寿命が長そうにないなあ。今晩、食卓に上るのだろうか。)
確かにロイの言う通り、観光地では見れない美しい風景を堪能。観光客にはひとりも出会わなかった。
田んぼは1年に3回使うという。うち2回が稲、1回が野菜。この季節は稲の収穫と田植えが混在する時期。(ユネスコ世界遺産となっているジャティルイ村の棚田の稲は背丈が高い別種で、1年に1回しか稲作をしないとのこと。)
・・・しかし、これ、本当にたった5キロ? 湿度の高い熱帯、しかも上り下りが多いことから、初心者の私は足が棒のよう。。。(後から聞いた話だが、GPSを持ちながら歩いた人によると、今日のショートコースは8.7キロもあったらしい。)
やっとゴール!
英語も日本語も片言のヒョウキンなバリ人のオジサンが、知っている日本語の単語を片っ端から並べて迎えてくれた。「マサコ! トウフ! バンザイ!」・・・きっと「良くやった!」と言いたいのだろう、と解釈する。
ヒョウキンおじさんはすごい元気に走っていたが、毎回参加しているのだろうか? |
汗だらけのTシャツと短パン、川でぐじゃぐじゃに濡れたスニーカーと靴下を駐車場で着替える。冷たいビールで生き返ったところで、運営係が「バージンは前に出なさい!」
全員がゴールした後、ハッシュ初体験者が「洗礼」を受けるのが伝統という。私を含め5人が前に出る。まずビールの一気飲み。そして、ビールを頭からかけられての「洗礼」。
今日が誕生日という参加者が、大量の焼き鳥を差し入れしてくれた。おいしい! 疲れがあっという間に吹っ飛ぶ爽快感、充実感! ビールでほろ酔い加減になったこともあって、「毎日でもやりたい!」
ハッシュは2年に一度世界大会「インターハッシュ」(Interhash)があり、来年2015年はバリ島で開催とのこと。
ところで、冒頭でショックを受けていた友人。とんだ勘違いだった。「ハッシュ」(hash)は「ハシシ」(hashish)の短縮形、つまりマリファナの意味もある。元人権弁護士、今は人権問題コンサルタントの生真面目な友人は、私が大麻を体験したと思い込んだのだった。
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