その好例が、この写真の猫。
(Humane Society International) |
その他大勢とは一線を画して、必死に柵にしがみつくこの形相。この中で数匹の命しか助けられないとしたら、やっぱりこの子に目が行く。
この猫たちは「玉林荔枝狗肉节」(The Lychee and Dog Meat Festival)のために、食肉となるべくして集められた。「玉林荔枝狗肉节」とは広西チワン族自治区玉林市(人口約700万人)で、夏至ごろの約10日間行われるお祭り。「暑さをしのぐために」(!?!)ライチと犬の肉を食べるという。期間中、1万-1万5千の犬が食肉になると推定されている。
そして、なぜか、お祭りの名前に入っていない猫も犠牲になっている。
このお祭りは近年、欧米メディアで取り上げられ、大きな批判が起こっている。(この祭り自体、伝統的なものではなく、比較的新しいという報道もある。)欧米の人々にとって、犬や猫は食用でないどころか、「家族の一員」であり、「人生の友」なのだから。今年、イギリスでは300万人もが、このお祭りの廃止を求めるオンライン署名運動に参加した。
お祭りのオーガナイザーは「人道的に殺している」、「犬を食べるのは、豚や牛を食べるのとなんら変わりはない」と主張。確かに、豚や牛や鶏を食べるために繁殖させておきながら、自分がペットにしている犬や猫は駄目、という論理は「ダブルスタンダード」「偽善的」「ご都合主義」と批判されても仕方がない。
しかし、人道的に殺している、というのはどうか。上の写真、不衛生な場所に、一緒くたに閉じ込められた猫たちは、どうみても怖がっている。この先、「人道的に」殺される可能性はあまりありそうにない。
更に、このお祭りのために盗まれたペットや番犬も多いという。可愛がっている我が家の犬や猫が盗まれ、見知らぬ人のご馳走になるというのでは、誰だって憤慨するだろう。
そんなわけで、このお祭りには、中国でも反対する人が増えているらしい。犬猫を見て、「おいしそう」ではなく、「可愛~い」と思う層が増加しているのだ。今年は400万人が廃止を求める運動に署名した。盗まれた自分のペットを買い戻す人や、自分のペットでなくても命を救うために、捕獲され檻に入れられた犬猫を買い取る人がいるとのこと。
写真の猫が閉じ込めた場所に潜入したのは、国際的な動物愛護団体「Humane Society International」のメンバー。
柵にしがみついて目立ったフル(Huru)ちゃんは、犬2匹、猫1匹と共に救出された。
(Humane Society International) |
その後、ワシントンDCの動物救助団体「The Washington Animal Rescue League」に引き渡され、こんなにきれいに!
(The Washington Animal Rescue League) |
一緒に救出された子と幸せに暮らしています。
(Humane Society International) |
もしかしたら、中国で飼い猫だったのかもしれないが、既に渡米してしまったのだから仕方がない。新天地で可愛がってくれる飼い主が見つかるといいね!
(参考資料:BBC News "China Yulin dog meat festival under way depite outrage", The Dodo "Cat Who Was Next To Be Slaughtered Learned Miracles Do Exist" など)
【関連ウェブサイト】
Humane Society International
The Washington Animal Rescue League
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