それから一週間。勢いに乗ってもっと多くのバージョンが発表されただろうか、それともあっという間に下火になってしまっただろうか。
調べたところ・・・ものすごい数のバージョンができている! 複数のバージョンがある国もある。ドイツの呼びかけに応じたテレビ局制作のものだけでなく、それ以外の有志が作ったものも多いようだ。ほとんどがオランダのフォーマットを継承しているが、独自の構成のものもある。質も様々。
ヨーロッパ大陸からは新たに、アイスランド、アイルランド(「51番目の州になりたい」)、アルバニア、イギリス(「第3次世界大戦を一緒に戦うのを楽しみにしている」)、イタリア、ウクライナ、クロアチア(「アメリカ第1、ドイツ第2、クロアチア第3」)、コソボ、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、セルビア(画質が悪すぎ。ナレーションではなく、セルビア民謡(?)っぽい歌が流れ、なんとなくシュール)、チェコ(「51番目の州になりたい」)、ノルウェー(「スウェーデンを最下位にしてくれ」)、フィンランド、フランス、ブルガリア(「アメリカ第1、ロシア第2」「上位10位に入りたい」)、ベラルーシ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ポーランド(「アメリカ第1。ポーランドは超第1!」)、マケドニア、モルドバ、ラトビア、ルクセンブルク、ルーマニア(「少なくとも上位100位には入れてくれ」)など20か国以上。もう存在しない東ドイツというのもあった。地理的に中途半端な位置にあるトルコもここで紹介しておく。
「ここが我が国」とラトビア。トランプが核兵器発射ボタンを押すことを懸念(?)して、他国を地図上で示す国がいくつも。 |
ヨーロッパは地域や州や都市からの参加も多い。一番多いのはドイツ。ザールラント州、バイエルン州、チューリンゲン州、バイエルン州の行政管区ウンターフランケン、ケルン市、トリーア市(「トリーア第1、アメリカ第2」)、アルンシュタット市、ブレーメン市、レーゲンスブルク市、ラインヘッセン市(「これからはラインヘッセン第1」)、クレーフェルト市。シュタッテックという田舎町までアピールしている。
イタリアからはモリーゼ州(「アメリカ第1、モリーゼ最下位。だって、本当なんだもん」)とベニス市、オランダのゼーラント州、フローニンゲン市、カンペン市(「アメリカ第1、オランダ第2。でも、オランダ国内ではカンペンが第1。つまり第1位を占めるのはアメリカとカンペン!」)、ポルトガル領のアゾレス諸島とマデイラ諸島、スイスのルツェルン(リュセルヌ)市(スイス第2、ルツェルン第3」)とZürcher Oberland(チューリッヒ高原?)、スペインのバレンシア地方など。中には、明らかにブームに乗じた観光案内ビデオもある。トランプの母親の出身地であるスコットランドは、クチバシで鍵盤を叩き、キーボードを演奏するニワトリの映像。全然やる気なし!
変わりどころでは、ルフトハンザ航空の社員による企業紹介ビデオ!?! いや、「これはパロディです。ルフトハンザ航空は全く関与していません」という断り書きが付いていた。
トランプが称賛してやまないプーチン大統領の国ロシアからは、少なくとも5つのバージョン。どれもかなり強気で余裕。例えば、「アメリカ第2。ロシア第1」(America First, Russia First (Parody))、「アメリカとロシアが一緒に第1位」(RUSSIA Second ☭ Russia welcomes Trump #everysecondcounts)、「これがロシアの地図。現在はもっと小さく見えるかもしれないが、NATO解体後、普通の状態に戻る」「アメリカ第1、ロシア第2というフリを続けようね」(Russia Second #everysecondcounts)。
NATO解体後、「普通の状態」(!?!)に戻ったロシア |
RTドイツまでが作成しているのには驚いた(RUSSIA WELCOMES TRUMP IN HIS OWN WORDS - OFFICIAL)。RTといえば、ロシア政府が各国で展開するテレビ局である。結構遊び心ある?
中東からは、トランプの敵対的態度が心配なイランとシリアとパレスチナ、そしてトランプから全面バックアップを受けているイスラエル。トランプの愛娘イヴァンカの夫ジャレッド・クッシュナー(Jared Kushner)はユダヤ系で、イヴァンカもユダヤ教に改宗。トランプはパレスチナ国家を認めない超タカ派ユダヤ系のディヴィッド・フリードマン(David Freedman)を駐イスラエル米大使に任命している。
イスラエルは「公式」と「非公式」(「第2になれなくても気にしない。戦車なんかを買う金だけおくれ」)の2バージョン。どちらにせよジョークだから、何をもって公式、非公式とするのか・・・?
ひたすらジョークに徹することができる他の国と違い、現実的な懸念を抱えるイランやパレスチナのビデオは、笑い飛ばしながらもかなり切実である。
アジアからはパキスタン(「欲しいのはアメリカの査証だけ」)、中国、シンガポール、フィリピン、北朝鮮、それに日本。北朝鮮のは誰が作ったんだろう。「公式」(Official)と銘打ってあるが。。。
金正恩とトランプは共通点がいっぱい。大の仲良しになれるという北朝鮮ビデオ |
中国は少なくとも3バージョン。英語と中国語の字幕付きバージョン曰く、「アメリカを第1にしたいのはわかるけど、第1は中国。アメリカは第2だ」。別バージョンでは「アメリカ第1、中国第2。今のところはね」。
アフリカも負けてはいない。モロッコ、ナイジェリア、ナミビア、ウガンダ、ブルキナファソからエントリーがあった。ナイジェリアは「ナイジェリアが気に入らないなら、ビアフラを第2に。ナイジェリアとほぼ同じだが、イムラム教徒がいない」。ナミビアは「当然アメリカ第1。どの大陸のことを言っているのかは知らないけれど。アフリカ大陸ではナミビアが一番!」
イスラム世界とEUからの紹介ビデオも。イスラム世界は「アメリカ第1ということは完璧に理解している。頼むから私たちを爆撃しないで!」、EUは「あなたはアメリカ第1というが、ヨーロッパも第1だ。現実を受け入れなさい」。
更には、地球や現実世界から飛び出したものも。例えば、火星の政府、ハリー・ポッターの母校ホグワーツ(Hogwarts)、『指輪物語』(The Lord of the Rings)のモルドール(Mordor)、人気テレビ番組『ゲーム・オブ・スローンズ』(Game of Thrones)の舞台ウェスタロス(Westerons)、映画『アバター』(Avator)に登場する衛星パンドラ(Pandora)。
最後に、この1週間アップされたビデオの中でも秀逸の、イランをご紹介する。ユーモアと知性がうまくドッキングして感心した。
まず、人種や言語の違いを含め、イランとイラクが別の国であることを根気強く説明。
「取り違えて、間違って攻撃されることを恐れている」からという。「そういうことはこれまでもあったし、これからも起こるでしょう」。最近のイラン国民入国制限も、このせいではないか。深夜、イラクを念頭とした大統領令を考えていた時、スマホのグーグルのスペルチェックに「イランのことですか?」と聞かれ、どっちがどっちかわからなくなったので、万全を期するために両方の国をリストに載せたのではないですか?
「そういうこともあるでしょう。でも、今後同じような間違いが起こるのを防ぐために、イランについてご説明いたします」。
イランの国の形は猫に似ている。イランを思い起こす時は、可愛くて無害な猫を考えてくれ。あなたはプッシー(「猫ちゃん」と「女性器」の意味を持つ)が大好きだから、この連想はきっとうまくいくだろう。
イランの核兵器については心配ご無用。イランは1994年以来、「プライド」という国産車を生産しているが、目的地に到達するより、「誇り」(プライド)を持って死ぬ確立の方が高いような、危ない車だ。国が誇る最高技術がこの程度である我が国に、核兵器が製造できるわけがない。発射しても、他国に到達するのではなく、自分の頭に落ちるようなミサイルしか製造できない。
こんな調子で続き、締めくくりは、
「アメリカ第1ということはよく理解しています。また、既に多くの国が、何故自分の国が第2になるべきかを説明するビデオを作成しています。正直言って、オランダやスイスやポルトガルやデンマークに、いやどんなヨーロッパ諸国にだってイランは太刀打ちできません。ですが、1点だけ聞き入れていただけないできないでしょうか? イランをイラクより上位に置いてください。そしてもらえれば素晴らしい。イラン国民はとても感謝するでしょう。皆、あなたが大好きになるでしょう。アメリカ第1、オランダ第2、デンマーク第3、そして最後の方でいいから、イラン、そしてイラク。どこに置かれても構いません。イラクより上位であれば。ありがとう。ありがとうございます。あなたに神様のご加護がありますように。」
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