2015年12月10日木曜日

異文化コミュニケーションに役立つベストセラー 『When Culture Collide』

「国際化」=「英語が話せること」

こんな単純な図式で物事が進まないことは、他国のビジネスマンと交渉したことがある人や、外国に支社や工場を設立した会社は痛感しているだろう。相手のコミュニケーション方法がわかっていれば、ビジネス交渉や外国人従業員の取り扱いがかなり楽になるはず。

そう思っている人の強い味方がこの本。リチャード・ルイス(Richard Lewis)著『When Culture Collide』(文化が衝突する時)。初版は1996年で現在第3版が出ている。100万部以上売れた大ベストセラーだが、邦訳はないみたい。(邦訳を出したい出版社はいませんか? 訳しますよ。)『ウォールストリート・ジャーナル』紙が「世界経済をナビするロードマップの決定版」(an authoritative roadmap to navigating the world's economy)と呼ぶ本だ。

リチャード・ルイスは、10か国語を話すイギリスの言語学者。ステレオタイプの危険性を認識しながらも、国による違いは確かにあるという。

ルイスは「リニア・アクティブ」(linear-actives)、「マルチ・アクティブ」(multi-actives)、「リアクティブ」(reactives)という3つのカテゴリーを使って、国民性を分析する。

  • リニア・アクティブ・・・計画し、予定を立て、オーガナイズし、予定に従って行動する。一度にひとつのことをする。ドイツ人やスイス人など。

  • マルチ・アクティブ・・・一度に多くのことを同時に行う、活発で饒舌な人々。時系列のスケジュールではなく、スリルや重要性に従って優先順位をつける。イタリア人、中南米人、アラブ人など。

  • リアクティグ・・・礼儀正しさや他人への敬意を重要視する文化。話し相手の言うことに静かに穏やかに耳を傾け、相手の提案に注意深く対応する。中国人、日本人、フィンランド人など。

これらの特徴は文化や伝統に深く根ざしているため、政治経済の状況が突然変わってもあまり影響を受けないという。

この3つのカテゴリーを元に、世界各国を位置づけしてみたのがこの図。青がリニア・アクティブ、赤がマルチ・アクティブ、黄色がリアクティブ。


国民性が違うと、コミュニケーションの方法も異なる。

例えば、アメリカ人。両者が持ち札をテーブルの上にさらけ出し、激しい交渉の末、片方または両方が譲歩し、素早く問題を解決する。




カナダ人はアメリカ人同様直截的であるが、アメリカ人よりも調和を求める。



イギリス人は控え目で礼儀正しくユーモアに満ちたやり方で、対立を避けようとする。それが効果的な場合もあれば、役に立たない場合もある。



ドイツ人は論理に頼る。だが、イギリス人やフランス人より証拠を集め、自分の主張を丁寧に説明する傾向がある。



フランス人は活発で論理的なディベートが大好き。



イタリア人は雄弁。交渉では口数が多く且つ柔軟。



スペイン人はイタリア人に似て、表現豊かであることを重要視する。



北欧諸国の中では、スウェーデン人が最も幅広い議論を行う。



フィンランド人は簡潔さを重視する。



ノルウェー人はスウェーデン人とフィンランド人の中間。



スイス人は率直且つ穏やかに交渉する。製品とサービスの質や価値に対する自信を表現することで、合意に達する。



ハンガリー人は論理より雄弁さを大切にし、相手が話している上から話すことを気にしない。




ブルガリア人は双方にとって有意義な解決策に到達するまで、まわりくどいやり方で交渉する。しかし、やっと到達した合意がお役所の官僚主義のためにぶち壊されることもよくある。



ポーランド人のコミュニケーション方法は、議題が何であるかにかかわらず、冷静で合理的なやり方から、口数が多くセンチメンタルでロマンチックなやり方まで様々であり謎に満ちている。



オランダ人は事実と数字を大切にする一方で、話すのが大好きであることから、最終合意に達するまでに長々と議論する。過剰分析することもある。



中国人は日本人より直接的。だが、会議は情報収集のためで、本当の交渉は別の場で行われる。



香港の人々はてきばきと交渉し、素早く合意に達する。



インド人の英語は曖昧の極地。真実とか外見とかいったことまで、交渉の対象となる。



オーストラリア人はフランクでくつろいだ会話を好む。



シンガポール人は人間関係を構築するのに時間をかける。ひとたび人間関係が築かれると、抜け目のなさを発揮する。



韓国人はエネルギッシュに会話する。真実を曲げてでも、交渉を早くまとめようとする。



インドネシア人は大変丁重な話し方をする。丁重すぎて、何を言っているのかわからないこともある。



イスラエル人は大抵の事柄について論理的に話を進めるが、いくつかの事柄については感情的になる。



ルイスの分析が正しいと思うかどうかは色々あるだろう。だが、異文化コミュニケーションのクラスを提供するルイスの会社「CrossCulture」の顧客には、ユニレバーやBMWなどの大企業が名を連ねており、かなりの評価を受けている模様だ。

(参考資料:Business Insider "The Lewis Model Explains Every Culture In The World" and "23 fascinating diagrams reveal how to negotiate with people around the world")

【関連ウェブサイト】
CrossCulture

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