2015年11月21日土曜日

世界の文化をチャートで説明する

文化」と一口に言っても、意味するところは多種多様。あまりにも多くの要素を含んでいる。

例えば、広辞苑はこう定義する。

「人間が自然に手を加えて形成してきた物心両面の成果。衣食住をはじめ科学・技術・学問・芸術・道徳・宗教・政治など生活形成の様式と内容とを含む。文明とほぼ同義に用いられることが多いが、西洋では人間の精神的生活にかかわるものを文化と呼び、技術的発展のニュアンスが強い文明と区別する。」

これをチャートで表そうという無謀な学者がいる。米ミシガン大学(University of Michigan)のロナルド・イングレハート(Ronald Inglehart)と独ルエパナ大学(Luephana University)のクリスティアン・ヴェルツェル( Christian Welzel)だ。
Business Insider
 
縦軸と横軸の両方の真ん中がゼロという複雑なチャート。縦軸は宗教、親子関係、権威などの伝統的価値(マイナス部分)とリベラルな世俗的合理的価値(プラス部分)を表している。伝統的価値を重んじる人々は離婚、堕胎、安楽死、自殺などを否定する。

横軸はサバイバル価値(マイナス部分)と自己表現価値(プラス部分)を表している。サバイバル価値は経済的また身体的安全を重視し、信頼や寛容と程遠い。自己表現価値は環境保護、性の平等、外国人や同性愛好者への寛容などを重んじる。

日本は世界のどの国よりも世俗的合理的価値を重視する一方で、横軸はゼロに近いニュートラルである。

一般的に、国民の生活水準が向上し、発展途上国から工業化を経て、ポスト工業化の知識社会へ移行するに従い、チャートの左下から右上に動く傾向にある。このチャートは1995-1999年、2000-2004年、2005-2009年の3回にわたる調査のデータを含んでいるが、将来的に各国の位置が移動していくわけだ。現時点で最も「進んでいる」国はスウェーデンということになる。

チャート内で近くにある国々を言語宗教によってグループ化も可能だ。「儒教」、「正教会」、「ヨーロッパのカトリック諸国」、「ヨーロッパのプロテスタント諸国」、「英語圏」、「イスラム」、「アフリカ」、「ラテンアメリカ」。言語や宗教が文化に強い影響を与えていることがわかる。中央の緑はベトナム、インド、タイ、キプロスだが、共通点は何だろう?

文化はまた、価値観政治意識とも深い関連がある。世俗的価値観と物質主義はフランス革命後の哲学者や左寄り政治によって形成されたため、社会民主主義及び社会主義的政策を長年採用した国や、国民の多くが大学で哲学や科学を学んできた国で顕著に見られる。

サバイバル価値観は東洋において、また自己表現価値観は西洋において特徴的である。リベラルでポスト工業化の経済形態を取る国では、益々多くの国民が自由を当然のものと見なし、自己表現価値を重んじる。

例えば、モロッコ、ヨルダン、バングラディシュ(いずれもイスラム国)は伝統的価値とサバイバル価値が評価されているが、アメリカ、カナダ、アイルランド(いずれも英語を第一言語とする)では伝統的価値と自己表現価値が高い得点を得ている。ロシア、ブルガリア、ウクライナ、モルドバ(いずれも正教国)では世俗的合理的価値が、スウェーデン、デンマーク、スイス(ヨーロッパのプロテスタント諸国)では世俗的合理的価値と自己表現価値が重んじられている。

イングルハートとヴェルツェルによると、「社会的経済的発展の度合いを見れば、国民の世界観の変化が予想できる」。工業化を経て、社会的経済的に発展すればするほど、国は民主化・近代化する傾向がある。つまり、工業化により伝統的価値から世俗的合理的価値へ、更に、ポスト工業化によりサバイバル価値から自己表現価値へ移行し、権力からの自由度が増すというのだ。

現在、2010-2014年の調査を分析中という。5年前と比べて、世界の文化地図に変化が見られるだろうか。

(参考資料:"This Chart Explains Every Culture In The World", Business Insider)

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